−お知らせ− このお話は史実に基づくものではなく、単なる妄想です。 一部に実在した人物・団体・物体・出来事・地名・思想・制度なども登場していますが、その行動や性格設定・実態・本質及び情景etcは、全て「でっちあげ」です。 又、内容も原作から大きく外れている場合も大いにあり、予測なしにオリジナルキャラクターも登場します。 まれに、現在は控えるべき表現も出てきますが、あくまで場面を描写するためにやむなく使用しています。 それを承知の上、多少のことは目をつぶり、遊び心で読んでみようという方のみ、下へお進み下さい。 三が日特別企画 -番外編 三つの願い- オスカル率いる衛兵隊B中隊はダグー大佐と共に、反王制派の過激な盗賊団が潜んでいるという山間部の村にやって来ていた。 もうすぐこの村近くの街道を利用して、オーストリアからの大切な使節団がフランスにやってくるのだという。 オスカルたちの使命は、使節団が無事にベルサイユに到着するよう、この地域にアジトのある盗賊団の襲撃から彼らを守ることにある。 村といっても山あり谷ありのかなり不便なところで、標高も高い。 渦を巻いて流れる川は渓谷のはるか下にあり、もし谷に落ちても川に落ちても命はまず助かるまいというほど、自然は厳しい表情を見せていた。 しかし村人たちはかなり古くからこの地に住み着き、細々と銀細工の加工で生計を立てているのだという。 それ以外にも村人がここに住み続ける事が出来たのは、昔から村に守り神がいるからだという話だが、どうせ単なる気休めに過ぎないだろう。 「こんな所に盗賊団なんていませんぜ、隊長」 小隊長のアランはさっそく田舎ののんびりした雰囲気にあきあきし始めている。 早くパリに帰ってうまい酒でもあおりたくなっているようだ。 彼のみならず、うんざりしている兵士も多い。 「ええい、何をのんべんだらりとやっておるか」 ダグー大佐はどこかで聞いた事のあるような言い回しで兵士たちにハッパをかけた。 「まあ待て、我々のような物々しい軍勢がやってきたとなれば、相手も何か動きを見せるはずだ」 オスカルは落ち着いている。 一方、真面目なアンドレは黙々と野営地のテント設営に取りかかり、他の兵士達と共に穴を掘ったり火をおこしたりしていた。 しばらくして彼がスコップで地面を掘っていると、カチンという金属音がして何かにつき当たった。 掘り返してみると出てきたのはうす汚れた金属製のティーポットのようなもので、オリエンタルというのかどことなくインド風な形をしている。 元々、庶民の出身であるアンドレは「もったいない」というのが口癖で、このポットも磨けばきれいになるだろうとひとまず懐にしまっておいた。 夜になってそれぞれの自由時間となり、アンドレはさっそく掘り出したポットを布でこすってみた。 するとどんどん美しくなり、磨き上げた結果、それは金ぴかのランプであることがわかった。 「なんでこんな山奥に埋まってたんだろうなぁ」 と言いながら彼がランプをこすっていると、突然、ランプの口から白い煙がもくもくと出てきたかと思うと、それはたちまち大きな魔神へと姿を変えた。 アンドレは腰を抜かしそうになるほどびっくりし、思わずランプを放り投げた。 「ほほほ〜う、よくぞ助けて下さいました、ご主人様」 全身が青い皮膚で耳がとがり、つるつるの頭にポニーテール、濃い眉毛とあごにたくわえた髭はいかにも魔物っぽく、短いチョッキとだぶだぶのスボンは昔絵本で見たアラジンのような衣装だった。 アンドレは魔神を見てなすすべもなく、ただアワアワと口を引きつらせている。 「ごっ、ご主人様だなんて……おっ俺は何にもしてませんっ」 アンドレはあわてふためいた。 「ほほほ〜う、いえいえ、実は私はこの村の守り神なのですが、300年ほど前の大雨で土砂に流され、埋もれてしまっていたのです。こうやってあなた様が助けて下さらないと私はいつまでも埋まったままでございました。ほほほ〜う、心よりお礼申し上げます」 魔神は深々と頭を下げた。 「ひぃっ、そう言いながら俺を捕って食うつもりだろう!ああ、こんな事なら最後に一度、オスカルに抱きついておけば良かった……」 アンドレは両手の指を組み合わせ、神様に祈った。 「ほほほ〜う、とんでもございません。私はあなたにお礼をしたいだけですよ。これからあなたは3つの願いを何でも叶えることが出来ます。ですから是非、よく考えて3つの願いを決めて下さいね。大きな声で願い事を叫ぶと、たちまち実現しますよ、ほほほ〜う、ほほほのほ〜う」 そう言って魔神は元のランプに帰っていった。 「ほほほ〜う」 アンドレもつられて別れの挨拶をした。 そして彼はひとまず村の村長に、守り神のランプが埋もれていたことを話し、ちゃんと奉って欲しいと手渡した。 さて、肝心なのはこれからだ。 アンドレはあれこれと考えた。3つの願いと言われても何を言ったらいいのだろうか。 見回りの警備の間も、食事中も、かれは延々考え続けて、とにかく前々からの願望だった一つ目の願いを口にした。 「俺はオスカルと…ち・ぎ・り・たい!」 アンドレは大きな声で叫んだ。 するとどうだろう。 ものの5分としないうちに、オスカルがアンドレを自分のテントに呼び出し、はずかしそうな態度でもじもじしはじめた。 「あのな、アンドレ…」 オスカルは何だか言いにくそうだ。 ごくんっとアンドレは生唾を飲み込んだ。 こんな野営地で二人が今から野性的な夜を過ごすのかと考えただけで胸が躍る。 「実はこれなのだが、私と一緒にちぎってくれないか」 オスカルはそう言って、古新聞をたくさん出してきた。 「これの土曜日版に面白い四コママンガが描いてあるんだが、それをスクラップしたいのだ。いつもは時間が無くて、野営地なら少し時間が出来ると思って持ってきたのだが、……こんな子供みたいな事、誰にも言うなよ」 オスカルは照れくさそうに言った。 「ちっ、ちっ、ぢがぁ〜う!」 アンドレは頭を両手で抱え込み、ぼう然とするオスカルを残して外へ飛び出して行った。 何と、願い事はちょっとした言葉のぶれで、全然違った願いを叶えてしまうのだ。 アンドレは少し慎重になり、残り二つの願いは当分使わないことにした。 さて、そうこうしているうちに、オーストリアの使節団は無事にこの山間部を通り過ぎて行った。 オスカルたち一行も野営地をたたみ、いざ引き上げようとしたのだが、突然その時、盗賊団が襲ってきた。 彼らはオーストリアの使節団を狙うつもりが彼女らに阻まれ、腹いせに殴り込んできたのだと言う。 たちまち大混戦が始まり、あちこちで剣を交える音が鳴り響いた。 だが、相手は地の利を利用して、大きな棍棒で兵士達を次々となぎ倒していく。 かと言って大事件にならないよう、命までは取る気はなさそうだが、とにかく相手は地形に詳しい。 都会人で、虫も嫌いな兵士がいる衛兵隊は圧倒的に不利だった。 気が付くとオスカルとアンドレもあっと言う間に崖っぷちに追いやられていた。 「さあ、降参しろ、ここに両手をついて謝れ」 盗賊団のボスは指揮官のオスカルに恥をかかせたいらしい。 だが、追いつめられてもオスカルはプライドだけは捨てようとしない。 盗賊はどんどんと増えていき、じりじりと下がる足下はもう崖のぎりぎりまで来ていた。 「お前達に頭を下げるくらいなら死んだ方がましだ」 と、負けず嫌いのオスカルが勢いで言ったとたん、足下が突然、ガラガラと音を立てて崩れた。 彼女はバランスを崩して落ちていき、アンドレはとっさに右手で彼女の腕を掴み、一緒に崖から落ちていった。 もう一刻の猶予もなかった。アンドレは落下の恐怖の中、二つ目の願いを大声で叫んだ。 「二人とも助けてくれっ!」 すると突然、オスカルを掴んでいないほうのアンドレの左腕がびよ〜んと上に伸び、崖っぷちの岩にガシッと食らいついたかと思うと、腕はまるでゴムのようにそのままどんどん伸び続け、結局二人はバンジージャンプのように地上すれすれで激突を免れ、ぶらんぶらんと空中で揺れていた。 驚いたのは盗賊団である。 人の腕が突然30メートルにも伸びたら誰でも腰を抜かす。 彼らは「化け物が出た」と悲鳴を上げながら逃げていった。 がけの下では、くたびれたパンツのゴムのように伸びた腕で、アンドレがオスカルを介抱していた。 そしてうっすらと目を開けたオスカルは、とぐろを巻いた彼の左手にびっくりし、「ぎゃっ」と言って再び気絶した。 アンドレは途方に暮れ、このままでは彼女に嫌われてしまうと思い、仕方なく3つめの願いを唱えた。 「左腕よ、元通りになれ」 すると腕はシュルシュルと縮まり、元通りになった。 後日、アンドレはオスカルに事の真相を語った。 すると彼女は彼を見下したような目で見つめ、顔をゆがませた。 「お前、馬鹿じゃないのか。そう言う時はまず一つめの願いで、これから私の願いはみんな叶うって言えば良かったんじゃないか」 オスカルはあきれたように言った。 「あっ、そうだったのか」 アンドレは自分の単純さを後悔した。 「だがアンドレ、二つめと三つ目の願いはよくわかったが、その前の一つめの願いは一体何だったんだ?」 オスカルは詰め寄った。 だがアンドレはひたすらしらばっくれ、それだけは口が裂けても決して言えないのであった。 おわり 2006/7/7/ 注)これはほとんど某ドラマのパクリです。 とはいえ、もともと西洋の童話にもこういう「三つの願い」があるのだとか? じゃあ、それがきっとルーツですね。 この内容で7月の三が日記念・・・になっているのかどうか、ちょっと不明。 まるで内容が無いよう〜・・・なんちゃって(さぶっ!) up2006/7/13/up 戻る |