−お知らせ− このお話は史実に基づくものではなく、単なる妄想です。 一部に実在した人物・団体・物体・出来事・地名・思想・制度なども登場していますが、その行動や性格設定・実態・本質及び情景etcは、全て「でっちあげ」です。 それを承知の上、多少のことは目をつぶり、遊び心で読んでみようという方のみ、下へお進み下さい。 -ジェローデル- フェルゼンにはソフィアという名の妹がいる。 二人は仲の良い兄妹で、彼は何かと慕って付いてくる妹をたいそうかわいがっていた。 彼女は兄が戦争から帰ってきたと聞き、父から彼の様子を見てくるようにと言いつかり、フランスにやってきたのだ。 フェルゼンの友人で今は駐仏大使になっているスタール男爵がたまたまスウェーデンに帰郷しており、このたびパリに戻るというので旅に同行させてもらったという。 元々父親がルイ十五世の元で仕えていたこともあり、今もなおフランス贔屓で、ソフィアもフランスには強いあこがれを持っていた。 彼女はフェルゼンが仮住まいに使っているパリの屋敷にしばらく滞在し、町をあちこち見物している。 ********** その日、オスカルとジェローデルがベルサイユ宮殿で控えている時、背後から声をかけてきたのはフェルゼンだった。 アントワネットのたっての願いで妹を紹介することになっており、ソフィアをベルサイユ宮殿に連れてきているのだという。 彼女も又、王妃に会えることを光栄に思い、広い宮殿内と庭園も是非見学したいと楽しみにしてやってきたらしい。 「妹を紹介するよ」 と、フェルゼンは自慢の妹を二人にお披露目するのがとても嬉しそうだ。 ソフィアは平均よりも少し背が高いが、すんなりと女性らしい体型をしており、見た目も上品でおっとりしている。 フェルゼンと同じ髪の色をし、彼とよく似た目元で、優しそうな表情をしている。 性格も似ているのか、芯のしっかりしたところを持ち合わせているようにも見受けられる。 「ほほう、私にもソフィア殿のように美しい妹がいたらどれほど幸せかと思いますよ」 ジェローデルは機嫌が良いのか、いきなり持ち上げにかかる。 彼のことなのでそのまま本音とは言い難いが、姉に囲まれて育った環境を思うとあながち口先だけのことではなさそうだ。 「よろしければ後で私がベルサイユ宮殿をご案内致しましょう」 とまで言い出しはじめた。 そうこうしているとポリニャック夫人がもったい付けるようすました態度で、「王后陛下のご準備が整いました」と現れる。 だが何かと対立しているオスカルや、いつも一言多いジェローデルの姿が目に入ると態度が一変し、何やらムズムズと言いたくなってきたらしい。 「あら、今日は見目麗しい独身の殿方ばかりお集まりなのでございますわね。中には殿方をまねた令嬢もご一緒のようですけれど」 いきなり夫人は声も高く、オスカルに不敵な横目を使った。 「私を女性扱いして下さるとは光栄ですな、ポリニャック夫人。さすが栄華を極めた貴婦人だけあって、天使のような顔をして無分別なことを平気でおっしゃる。キツネのように計算高いだけではごさいませぬな」 オスカルは涼しい顔で笑った。 「ほほほ、世の中を見尽くした貴婦人こそ、天使にもキツネにもなれるものですわ」 夫人は負けずに言い返す。 「それともご令嬢ではなく殿方とお呼びした方がよかったのでございますか。けれど、見た目は男だとしても、所詮、女になれずして男になれるものではありませんわ。それなりの経験を経てこそ、人ははじめて世の中を違う目で見つめることが出来るのです。あら、こんなこと百戦錬磨の大佐様には余計な忠告でございましたかしら」 と、さらに調子に乗って口を滑らせる。 「ソフィア殿。女性も年を重ねるごとに、頭に浮かぶ妄想が好き放題に口から飛び出てくるようです。このように日の高いうちから色艶あるお話を伺えるとは、男としては嬉しい限りですが、是非、貴女には見習って頂きたくないものでございます」 皮肉の応酬をぼう然と見ていたソフィアに、ジェローデルは落ち着いた口調で告げた。 「んまぁ」 夫人は顔を真っ赤にし、口をへの字に曲げて退散した。 「せっかくの美貌が台無しでございますな、ポリニャック夫人」 宮廷の中で長い間アントワネットの寵愛を受け続け、自分から相手に皮肉を言っても、誰からも面と向かって嫌みなどやり返される事など無いポリニャック夫人だが、向こう気の強いオスカルには通用しない。 夫人にすれば、何度オスカルを失脚させようとしても、彼女に対する王妃の信頼を切ることが出来ず、目障りでしようがない。 結局、今日もやりこめることは出来なかった。 彼女はオスカルの捨てゼリフには反応もせず、一同の笑いを背に受けてさっさと去っていく。 ただ、当のオスカルも、夫人のきつい一言までは決して笑い飛ばすことは出来ないのであったが。 ********** 王妃とソフィアの謁見は和やかな歓談で進み、午後にはジェローデルの約束通り、彼女に宮殿を案内することになった。 フェルゼンもオスカルの腹心の部下とあれば安心して妹を任せることが出来るし、これはちょっとしたお見合いのようなのかも知れぬ、とさえ思った。 「申し遅れましたが私の名はヴィクトル・クレマン・ド・ジェローデルと申します」 彼は慇懃な態度で彼女に挨拶した。 「彼はフランス近衛隊所属の少佐だ。間もなく中佐に昇格の予定らしい」 フェルゼンも気をよくして彼を持ち上げる。 なによりジェローデル家は名門貴族で、彼は長男ではないので家督を継ぐことはない。 オスカルの信任も厚く、将来も約束されているのであれば安心だし、自分がこのまま結婚せずに過ごすとすれば、兄弟もいるとは言え、もしもの時のためにソフィアにも今から身の軽い相手を考えいおいたほうが心強い。 この時代、跡取りになるのは長男なので、次男や三男は軍人や僧侶になったりしていた。 ジェローデルの場合は帯剣貴族であったことから軍人の道を選んだのだ。 ********** ジェローデルは気まぐれでソフィアを誘ったのだが、心地よい風に吹かれて庭園をそぞろ歩くというのは久しぶりだったので、ゆったりした気分を満喫していた。 歩きながら彼は、ソフィアがあちこちと見て回ったというパリの話を持ち出した。 「サン・ジェルマン通りは行かれましたか。あそこでは大きな市が立つので時間つぶしにはもってこいですよ」 「まぁ、そうなのですか。兄はあまり遊ぶところには連れて行ってくれませんのよ。今度おねだりしてみますわ。少佐、もっとフランスのことを教えて下さいますか」 「そうですね、フランスの全人口は約2300万人で、貴族・僧侶・平民と3つに分かれた身分のうち、貴族は40万人ほどで非常に少数です。その中で名門と呼ばれる貴族はフランス国内で約四千家に及びます。ちなみに人口としてはイギリスに比べて2倍ほど多く、特にパリの人口は多く60万人を抱えている。こんな感じでよろしいのかな」 「まるで辞典のようですわね」 ソフィアは笑った。 ジェローデルが言うように、特権階級である貴族の人口比率はフランス全人口の内で1.7パーセントに過ぎない。 同じく特権階級の僧侶はもっと少なく、14万人ほどしかいない。残りは第三身分と呼ばれる平民である。 特に彼のような大貴族は歴史も古く、外国との戦争を担う役目があった。 だが長い歴史の中で、力の均衡が崩れる時がくる。 平民の中でもブルジョワと呼ばれる実力者は経済的に力をつけてきており、世の中の力関係は少しずつ変化しはじめていた。 又、宮廷貴族も自分たちを養う国王にいつまでも従順ではなく、かつてのように領主として権力を振るっていた頃に戻りたがっているし、法服貴族も王室の権限をせばめようとしている。 「今は時代がかわりつつあるのです。少数派の貴族が権力を握ることに平民たちは不満を感じているのも、貴族にとっては不可解でも、彼らにとっては当然なことなのですよ」 しかしジェローデル家では昔から王家には忠実に仕えるという家訓がある。 祖父も父の代もそうであったし、彼も同様だ。 彼は剣でこの身を立てていこうと決意した13歳の時、国王に忠誠を誓ったのだ。 「ジャルジェ大佐のことも少し教えて下さいます?」 ソフィアはオスカルに興味を持っていた。もし女性と聞いていなければ彼女の容姿に惹かれ、恋に落ちていただろうとさえ思っている。 「近衛隊には連隊が二つあり、隊長はそのうちのひとつを率いられています。規模で言うと、ひとつの連隊は約3000人の兵士で構成されているのですよ」 「まあ、そんなにたくさんの兵隊さんたちを大佐は統率なさっているのですね」 「連隊は4個大隊から成り、そのうちの一つは私が率いています」 ソフィアのの驚きを見て、彼はついでに自分のことも付け加えた。 特に近衛隊は国王陛下の直属の軍隊で、容姿や家柄なども含め、特に美しさが要求されている。 言ってみれば国王の権威がかかっているので、選ばれた者でないと入隊出来ない。 きらびやかな軍服をまとい、勇壮に馬を駆る近衛隊の行進は、すなわち国力の強さを内外に広く示すためのものだ。 それはすでに幾度か経験済みのジェローデルでさえ心がおどるほどで、誇らしげで華麗な兵士の先頭に立つ連隊長のジャルジェ大佐の姿はいつもながら光り輝いている。 近年、4代以上続いた貴族でなければ将校になることはできないという法が出来たのだが、近衛隊はほぼ名門貴族で構成されており、ほぼ影響はない。 現在のジェローデルは近衛隊の大隊長の地位にあり、連隊長のジャルジェ大佐の直属の部下である。 かねてより信頼されている彼は補佐として副連隊長を任され、今も彼女のことを隊長と呼ぶことができるのを光栄に思っている。 「階級としては大佐に昇格するのが大貴族であってもだいたい30才を過ぎてからが普通で、平民であればとても無理な地位です。だからジャルジェ大佐は異例の出世なのですよ」 ジェローデルは我が事のようにオスカルを自慢する。 特に馬術と剣の腕で彼女の右に出る者はなく、剣の名手とうたわれた彼もかつて手合わせした折り、痛い目に遭っているほどだ。 それに女性だからというわけではないが、ジャルジェ大佐の存在そのものを崇拝する兵士もいる。 さすがに女神というのは言い過ぎだが、たぐいまれな天賦の才能の持ち主と表現すべきであろうと彼自身も密かに思っている。 「実は我が国には将校が大勢います」 この時代、フランスの軍隊は約20万人弱ほどの兵士で構成されており、そのうち将校は1万人以上もいたのだ。つまりだいたい20人に1人が将校という計算になる。これでは俸給を支払う国家予算にもかなりの負担がかかる。 又、将軍に至っては700人以上居るのだから、兵士250人につき一人は将軍と言うことになる。 「いくら階級が形骸化・形式化してしまっているとは言え、これでは多すぎというものでしょう。なので私としては早くジャルジェ大佐が将軍に昇格し、形式ばかりではない、真の実力を兼ねた人物による指揮を是非とも見てみたいものだと思っているのですよ」 「ジェローデル少佐は本当にジャルジェ大佐を慕われているのですね」 彼の堅苦しい話にも、ソフィアは根気強くつきあっていた。 むしろ大胆に語る彼の博識を楽しんでいたとも言える。 「なにせ、私の心の師ですからね」 と言いながらも普段はオスカルに対し、いつも弟のように甘えている自分を彼自身はよくわかっている。 だが実は最近、隊長は何だか様子がおかしいとジェローデルは感じていた。 将校として抜かりがあるわけではないし、職務態度に問題があるわけでもない。 ごく個人的なことなのだが、ジャルジェ隊長は異様に美しくなってきている。 もちろん、女性なのだから美しいのは大いに結構だし、美しさ故に弊害が起きている訳ではない。 彼の考えでは隊長は恋をしていると見受けられた。 不思議な感じもするが、彼女も人間である以上、熱病のように誰かに激しく恋心を抱き、時には人恋しく感じたとしても不思議ではない。 問題は、一体相手が誰かと言うことだ。 付き人のアンドレの本性が平民ではないかと言うことは、ジャルジェ家の屋敷で見かけた雰囲気でうすうすわかるのだが、いずれにせよ立場としては彼が一番近い位置にいる。 だが、彼は昔から屋敷に居候していたので、単なる友達に過ぎないだろう。 彼の勘ではフェルゼン伯爵があやしいのだが、さすがに隊長も態度が慎重で表情には出さないし、フェルゼン伯自身は相変わらずアントワネットに心が傾いているに違いない。 これではまるで隊長は横恋慕だ。 どうにもジェローデルとしては不思議な気がして仕方ない。 ジャルジェ隊長とフェルゼン伯は比較的、性格が近い。 二人とも、基本的にあらゆる才能に恵まれている上に真面目で誠意があり、華やかさの陰で実直な面も持っている。 多少、隊長の方が向こう見ずで喧嘩好きとは思えるが、分類してみるとタイプとしては近い。 普通、人は無い物ねだりをするもので、自分とは似ても似つかない、正反対の性格の相手に恋をすることが多い。意外性というやつだ。 だから相手がフェルゼン伯だとすれば、どうして彼なのかという所で行き詰まってしまう。 かく言う彼もジャルジェ隊長のことが好きであるし、好きと言っても尊敬と言った方が正しいであろう。 だが、彼女に対する忠誠心がいつ何時、愛情へと変化するかどうかまでは今のところわからない。 その彼からすれば、今のところ対抗心が燃えるのは付き人のアンドレなのである。 別段、彼が隊長と恋仲であるはずはないし、今後もあの二人が友人の域を出るとは考えにくいが、ジェローデルの本能の部分が彼を警戒せよと言っている。 だからというのではないが、フェルゼン伯についてはどう考えても、隊長と男女の仲という点での相性が抜群に良いとは思えない。 あの二人は親友になるべきタイプだと彼は思う。 「そんなことより今、我が国は大変危機的状況にあるのですよ」 財政は疲弊し、民衆は自由だ平等だというパンフレットに踊らされ、人民をまとめるべき王室は国王のあまりにも良すぎる人柄によって確固たる方針を打ち出せず、王妃はと言うと何かにつけて批判の的となっている。 誰もが腐敗した制度に失望し、今にも洪水がやってくるという風な不吉な予言をし、明日にでも世の中がひっくり返って、王制が廃止されて共和制になってしまうと言わんばかりに騒いでいる。 しかし平民どもは知っているのだろうか、と、ジェローデルは思う。 今のフランスの軍隊は国王の軍隊であり、兵士の構成も古くからの帯剣貴族や志願兵によって成り立っている。 もちろん、地方ごとに民兵組織もあるし、兵役もある。 だが、主立った軍の兵士は徴兵ではない。 それがもし共和国となればどうなるか知っているのだろうか。 徴兵制度の下で国民は義務として兵士となるのだ。 全国民の半数、つまり男どもは全て兵士、及びその予備軍なのである。 もし、共和国政府の方針が戦争を推進するとなれば、この国は情け容赦なく家庭から父や兄や息子を死地へと送り出すのである。 しかし、まだそうなってもいない未来をとやかく言っても仕方ない。 案外、共和制の世の中になったとしても、民衆は絶対王制の時代よりも住みやすいと感じるかも知れないし、むしろ共和国のあり方を当然ととらえ、国のためなら喜んで戦地に繰り出すかも知れぬ。 特に最近ではブルジョワ層の台頭はめざましい。 貴族でないと言うだけで実は彼らの経済力は日増しに高まり、生活の質や教養もすでに貴族に引けを取らない。 ただ、貴族でないと言うことが彼らの自尊心を深く傷つけているのだ。 今までであれば、彼らは法服貴族のように貴族に成り上がろうとしたり、貴族と縁を結んだりと、貴族の身分を得ようとしてきた。 だが今は、自尊心を満足させるために自らが貴族になりたいのではなく、身分制度そのものを打ち破ろうとしている。 彼らは自尊心のためには多少の犠牲もいとわず、共和制における義務など当然なものと受け止めるかも知れない。 先日の四代以上続いた貴族以外は将校になることを禁じる法も、彼らにとっては改革から一歩後退した保守的貴族の仕業と考えているだろう。 嵐は近いと予言する者は多く、制度のほころびが大きくなっていることを見て見ぬふりをしている貴族とは裏腹に、大多数の人民はむしろ嵐を待ち望んでいる。 ジェローデルは制度に弊害が多い現在のしくみには疑問を感じているが、国王陛下の意志で改革がなされ、民衆の意見も取り入れながらゆるやかに世の中が変わっていくことを望んでいる。 それは連隊長であるジャルジェ大佐も同じ意見だと思われた。 「色々と大変なのは兄からも聞きました。なので、余計に王妃様のそばでお守りしなければと申しております」 ソフィアとて、フェルゼンとアントワネットのうわさを知らないわけではない。 彼女なりに兄のことを心配し、今後の彼の身の振り方に注目している。 できればスウェーデンに帰り、グスタフ三世の膝元で仕えて欲しいと心から願っている。 だが、兄がこれまで自分の人生を悔いなく生きてきたことは、家族としてそばにいてよく知っていた。 なので妹として兄の信念を尊重し、数少ない味方になろうと思う。 彼女はこれからも、見守り続ける決意をしているのである。 「時代は突然動きだし、嵐のごとく吹き荒れるものです。その時がくれば各人はどう動くべきか、今の内から考えておく必要があります。人の流れを読み、さらに人脈を広げることはこれからも怠ってはいけないと私は自分に言い聞かせているのですよ。それはフェルゼン伯爵もきっと同じでしょう」 「なら良いのですが」 ふと、ソフィアは空を見上げて、遠い空に飛び立つ鳥の姿を追いかけた。 ********** 「ジェローデル少佐はどうだった」 フェルゼンはその夜遅くなってベルサイユ宮殿から戻り、先に帰っていた妹のソフィアにたずねた。 「どうもこうもありませんわ、お兄様。彼はすっかりジャルジェ大佐にぞっこんです。色々とお話をしていてとても気の回る方ということはわかりましたが、とても個性的な方ですし、ああいうタイプは夫にするというよりはお友達の一人としてつきあう方が幸せだと私は思いますわ」 彼女はあきれたように笑って言った。兄の企みにもそれとなく気付いているらしい。 「そうか、そう言えばオスカルは部下に慕われていたのだな」 彼は苦笑した。 妹にそこまで言い切られて、さすがに縁談話は切り出せない。 まして自分は故国に帰らず、アントワネットのために生きると決意したなど、この場で言い始めても埒があかない。 とはいえ、フェルゼンに対しては何事もはっきりと言うソフィアが、アントワネットの事について何も言いださないのは、幼い頃から彼をずっと見つめてきた彼女が、兄の事を信じているからに違いない。 彼は陰ながらそっと見守り続けてくれるソフィアに感謝した。 「明日はお芝居に連れて行って下さいね」 兄の優しげなまなざしをどう思ったものか、彼女は茶目っ気のある口調でおやすみの挨拶をして出ていった。 フェルゼンは笑ってうなずき、ふと窓に目をやると、明日もよく晴れそうな雲一つ無い夜空に満天の星が輝いていた。 2005/8/10/ 補足:フランスの人口、軍の配置や人数、ここに出てきた色々なデータは少しずつ水増ししたり減らしたりしています。 なので信用しないでね。 それと、スタール男爵がこの時期、駐仏大使をしていたかどうかは未確認です。念のため。 それからこの時期、ソフィアはすでに20代後半なので、普通なら結婚している年頃じゃないかと思うんですが、話の関係で独身にしました。これもでっちあげですよ〜ん。 up2005/10/14 戻る |