Blue Day その日、オスカルは冴えなかった。 腰が痛くて、足が重い。大したことでもないのに、何かとイライラする。 兵たちの剣が下手だとか、兵舎のやかましい声とか…、普段なら気にもとめないことがやたら頭に引っ掛かる。 そう、今日はアレの一日目だった。 「…だめだ、屋敷へ帰ろう」 オスカルは貧血気味の体を馬に預け、屋敷へ戻って行った。 将校の立場のオスカルには、元々毎日隊に出向く義務はない。本来なら書類など屋敷ででも処理出来るし、兵士たちの訓練はダグー大佐に任せてもよい。監督と称して、時たま兵の様子を見に来るだけでいいのだ。 だが、生真面目なオスカルは、ほぼ毎日衛兵隊へと来ていたので、このように休むとなるとやたら目立った。 今日もオスカル隊長は早退した。毎月の半ば過ぎに隊長はいつも何日が休む。隊員たちも子供ではない。その意味くらい誰でもわかっている。 「一応、ああ見えても女なんだな…」 「ミエ張ってるだけで、本当はウソじゃないのか?」 隊員たちはうわさした。 「バカ野郎!てめえらにオスカルの女らしさがわかってたまるか」 いつも無口なアンドレは、うわさをしている隊員に腹を立て、思わず怒鳴った。 「……?」 バカと言われても、この際、何とリアクションしてよいのか、隊員は返す言葉もなくただ固まってしまった。 オスカルは屋敷へ帰るとすぐに自室へこもり、ベッドに横になった。 …ああ、おなかが痛い…。 彼女が痛みのため唸っていると、心配したアンドレも彼女の後を追って戻って来た。そして遠慮もなくオスカルの部屋へ入って来るなり、おもむろに彼女を励ました。 「オスカル、大丈夫か?それは病気じゃないんだ、しっかりしろ!」 アンドレはオスカルの枕元でガッツポーズをとって見せた。 「…」 「俺に出来ることがあれば何でも言ってくれ」 「…」 「頑張れよ、オスカル」 アンドレはそう言い残し、彼女の目の前に脱脂綿一箱を置いて出て行った。 「あのバカ…!」 オスカルは肩をわなわな震わせて怒りを我慢した。 だが、もっと腹立たしいのは、そんなバカ呼ばわりした男のことを好きになった自分自身のことであった。 「ああ…頭が痛い…」 オスカルの悩みは尽きないのであった。 書いた時期:1997年頃 up2004/12/ 戻る |