−お知らせ− このお話は史実に基づくものではなく、単なる妄想です。 一部に実在した人物・団体・物体・出来事・地名・思想・制度なども登場していますが、その行動や性格設定・実態・本質及び情景etcは、全て「でっちあげ」です。 それを承知の上、多少のことは目をつぶり、遊び心で読んでみようという方のみ、下へお進み下さい。 -シャルロット- ポリニャック夫人の娘で今年14才になるャルロットという少女がいる。 そろそろ縁談を考えようとしていた矢先、どうも娘の様子がおかしいことに気が付いた。 いつもは王妃の世話で忙しく、娘にあまり構っていなかったのだが、シャルロットは今までさほど手もかからず、育てやすい子だった。 性格の良い少女で、宮廷では「器量は母親に似たが、性格はまるで他人」と妙なニュアンスで誉められている。 これから誰の所に輿入れさせたら娘が生活に困らず、尚かつポリニャック家にとって有益かしらと考えていたのだが、何かあると王妃がプチ・トリアノンの小劇場の話に乗って欲しいだの、新しいツボが東洋から届いたから見て欲しいだのと呼び出され、ゆっくり夫と話し合う暇もない。 そうこうしているうちに娘は夢見がちな目をしはじめ、気分が変動し、どうにも恋をしているように見える。 相手はどこの誰かと探るうちにギーシュ伯爵であることを知った。 シャルロットが社交界デビューしたときからギーシュ伯爵は彼女に目を付けていたらしく、少しずつ親しくなってきたらしい。 よく言えば伯爵の一目惚れである。 ギーシュ伯爵と言えば王妃と同い年で、シャルロットからすれば十才以上年が離れている。 しかし年はさほど結婚に関係ないが、問題はギーシュ伯爵はあまり裕福ではないことだ。 ポリニャック夫人からすれば、世の流れに乗りそびれた要領の良くない人物という感じがしている。 調べると領地は痩せた土地だというし、これと言ってパッとした収入源も持っていない。 宮廷でもさほど要職についておらず、まず本人に覇気がない。 よく言えば優しい性格なのだろうが、優しいだけでは世渡りはしていけない。 ただ、幸いなことに柔らかな物腰が貴婦人には人気らしいが、遊び人ではないらしい。 だがいずれにしても娘の夫となるには役不足としか思えない。 夫人はシャルロットを呼び出し、事の真相を聞き出そうとした。 娘は母親に事態が知れて、仕方なく重い口を開いた。 多分、許してもらえないと感じていたのだ。 聞くと二人はすでに恋仲で、将来を誓い合っているという。 共に初恋の相手で、二人を引き合わせたのは神様の奇蹟だと信じている。 さらに相手のギーシュ家ではシャルロットをいつでも受け入れる用意があり、実の娘のように大切に扱うと話しているそうだ。 「いけません、お母様は反対ですからね。あのギーシュ伯爵はポリニャック家に釣り合うほどの財力も権力も持っていないではないですか。もしあなたがこの先、生活に困って路頭に迷ったりすれば、泣くのはあなたなのですよ」 ポリニャック夫人は、シャルロットの甘ったるい話を最後まで我慢して聞いた後で、ここぞとばかりに娘の夢をぶち壊しにかかった。 若い頃の情熱など一時の目くらましに過ぎず、その後にやってくる地獄を思えば、ただのかさぶたのようなものだ、と。 「だけどお母様、私はギーシュ伯爵のことを愛しています。どんな苦労でも我慢致しますわ」 シャルロットは涙ながらに訴えた。 「あなたは貧乏を知らないからそんな事が言えるのです。お金がないことがどんなに惨めな事か…。それはそれは情けなくて愛情などいっぺんに冷めてしまうものです。そうなってからでは遅いのですよっ。ですからちゃんとしたあなたの結婚相手はお母様が探して参ります。いいですね」 夫人は絶対に譲らない。 「私はいやです」 母親のがんとした態度に対し、シャルロットはベッドに突っ伏して泣き始めた。 「お母様の言うことを聞くのです。でないとお屋敷から一歩も外へ出てはなりません」 感傷的な気持ちなどいつか忘れてしまうことだ。夫人はそう決めつけ、哀れな娘を無視した。 さっそく翌日からの舞踏会には母親の監視があり、シャルロットは容易にギーシュ伯爵に近寄れなかった。 何事かあったのかと心配する伯爵に、ポリニャック夫人の冷たい視線が突き刺さっていた。 碧眼で金髪の少し気の弱そうな青年は、それでも何とか隙を見てシャルロットに話しかけ、事の次第を聞いた。 「私のことであなたは悲しい目にあったのですね」 優しくなだめられて、わんわんと泣き出すシャルロットに、伯爵はどうにか解決方法を探すから心配するなと抱きしめ慰めた。 ********** 「何、縁談?」 オスカルはアンドレからシャルロットの話を聞いたときは、意外な気がした。 ポリニャック家と言えばアントワネットの寵愛を受けて、宮廷では飛び抜けて出世している。 その相手に、あまり宮廷でも目立たないギーシュ伯爵というのはどう考えても釣り合っていない。 「確か、士官学校で顔見知りだったんじゃないのか、オスカル」 ジャルジェ家の厩で馬具を片付けながら、アンドレは子供の頃のことを思い出していた。 オスカルも彼は同い年なので知ってはいるが、士官学校でもあまり目立たず、どちらかというと静かに本を読んだり、軍事と言っても馬の世話をしていることが好きな地味な青年だった。 「まぁ、確かに性格は悪くなかったとは思うが」 オスカルは馬車に寄りかかり、腕を組んだ。 どちらかというと士官学校時代を思い起こしても、活発なオスカルの方がずいぶん勇ましくて男らしい。 ひょっとして一度ぐらい彼を泣かせたかも、などと思い起こす。 「それでだ、ポリニャック夫人はカンカンに怒って反対しているらしいぞ」 アンドレはベルサイユ宮殿に伺候したオスカルを待っている時、御者たちが集まってうわさしているのを聞いたのだという。 案外、お屋敷の旦那や貴婦人たちの生の声を聞くため、かなり真実に近い話もごろごろしているという。 「他人の家のことにまでとやかく言う気はないが、貴族の娘に生まれると苦労も多いんだなぁ」 と、まるで他人事のように言うアンドレも、心のどこかで身分制度など自分にとっても気苦労の元凶だと感じている。 「仕方ないとは言え、少しかわいそうだな」 いつもポリニャック夫人の狡猾さを苦々しく見ているオスカルにすれば、珍しくシャルロットに同情的だ。 以前、オスカルはシャルロットから好意を寄せられていた。 オスカルが同性だと知っていたのでほんの淡い憧れに過ぎないが、当時は真剣に思い詰めてオスカルの誕生日に花束を贈ってきたこともある。 何かあると「オスカルさまぁ〜」と追いかけてきたり、ポリニャック夫人の娘にしては、素直な性格で非常に愛らしい表情をしていたことも思い出す。 その少女も子供の憧れを過ぎ、本当の恋に目覚めたらしい。 出来れば惹かれ合う二人を一緒にさせてやりたいとも思う彼女も又、心のどこかでフェルゼンの影がちらついている。 「おかげで宮廷中はひそかにこの話で盛り上がっているみたいだ。ポリニャック夫人も大あわてで別の輿入れ先を探しているらしくて、これから何が起きるか見物だぞ」 ********** アンドレの予言ではないが、数日後のベルサイユ宮殿での舞踏会はとんでもないことになった。 娘に釣り合う結婚相手はそうすぐには見つからず、妻を亡くした裕福な貴族などを手当たり次第に当たっていたポリニャック夫人の所に、召使いが顔色を変えてやって来て、シャルロットが見あたらないのだと告げた。 いつもは鏡の間の隅の方にひっそりと居るはずなのだがと、夫人が首を伸ばしても見あたらない。 さては又、ギーシュ伯爵が娘を誘惑したのかと腰を上げ、あたりを探し始めた。 その頃オスカルは警備のため、宮殿の外にいた。 王の寝室がある大理石の中庭から正面格子門のあたりまでをアンドレと共に歩き、怪しい人影がないかを確認し、再び宮殿側に向き直って王室礼拝堂の前まで戻ってきていた。 そろそろ夕闇がせまる頃で、この時間は目が利きにくい。 「あっ、あそこの鐘楼のあたりに何か居るぞ、鳩かなぁ」 アンドレの指さす方を見上げたオスカルはあっと息をのんだ。 王室礼拝堂のてっぺんにある鐘楼の手すりを今、まさに乗り越えようとしている白い影がオスカルには見えていた。 アンドレも目をこらし、それが小柄な女性で、塔から今にも飛び降りようとしていることがはっきりと見て取れた。 「シャルロット」 オスカルは叫んだ。 見間違いはないと言うべきか、約半分は彼女の勘である。 今夜、このような騒動を起こしそうなのは、うわさの渦中にいる少女以外に考えられない。 シャルロットはまだまだ若い。 たとえ恋人から心配するなと言われても、なかなか感情に自制が効かないことは仕方ない。 母親の監視でギーシュ伯爵と会うこともままならず、今夜こそ誰か他の結婚相手が決まってしまえば、もうこの恋はおしまいなのである。 思い詰めた彼女は舞踏会を抜け出し、泣きながら礼拝堂の塔へ上っていた。 だが、不思議と死のうとは思ってはいなかったのである。 あまり母親と性格は似ていないと言われた彼女だが、窮地は知恵と運で何とか乗り切ることが出来るような気がする所は、いかにも母親譲りなのである。 ただ彼女は、高いところに上がれば気が晴れるような気がしていたし、一騒動を起こせば、集まってきた多くの人に自分の想いの強さを示すことが出来ると思ったのだ。 「アンドレ、控えている衛兵を呼べ。それからポリニャック夫人にも知らせてくれ」 「お前は?」 「鐘楼へ上る。様子を見て後で追いかけてきてくれ」 オスカルとアンドレはそれぞれ二手に分かれて駆け出した。 騒動はたちまち舞踏会に知れ渡り、ポリニャック夫人やその一族知人たちはあわてて飛び出していった。 それと同時に、多くの人も何事かわからないまま付いて行く。 そして鐘楼の手すりから身を乗り越え、かろうじてしがみついているシャルロットの下にはいつの間にか野次馬たちが集まって来ていた。 「…シャ…ルロッ…」 高いところから身を乗り出した娘が、吹いてきた風にあおられて今にも落ちそうになったところでポリニャック夫人は危うく正気を失いかけた。 「ああっ、陛下のご成婚があった所から飛び降りるだなどと、何と不吉な」 と、野次馬の中には全くの見当違いのことを言いだす者までいる始末で、あたりは騒然とした雰囲気に包まれている。 その頃オスカルは礼拝堂に入り、鐘楼へ向かっていた。 この日は職人が屋根の改修作業をしており、屋根へ上がる足場やハシゴが組んだままになっている。 身の軽いシャルロットは窓からハシゴに乗り、屋根の鐘楼まで上ったらしい。 同じ頃、衛兵と医者の手配を済ませて礼拝堂の前に戻ってきたアンドレは、さっきまでそこに居たポリニャック夫人の姿が消えていることに気が付いた。 「シャルロット」 オスカルは少女を驚かせないように声をかけた。 「はっ、オスカル様」 泣きはらした目でシャルロットは振り返った。 「そこは危ないからこっちへおいで」 オスカルはそっと手を伸ばした。 「私はここで頭を冷やしているだけなのです。ここにいると嫌なこと、みんな忘れてしまえそうなんですもの。それに風が冷たくて気持ちいいの」 シャルロットは平然と答えた。 早まったことをしでかすつもりでは無いのだなとオスカルも少し安心し、このまま神経を高ぶらせないように説得しようとした時、下から上がってくる人の気配がした。 「お母様!」 シャルロットは突然あわてふためいた。 ポリニャック夫人が身動きしにくそうなドレスをひきずり、息を弾ませて上がってきたのだ。 娘が驚いたように、髪は乱れ、必死の形相には迫力がある。 「ジャルジェ中佐、あなたは下に下がっていて下さいません?これはポリニャック家の問題ですわ」 母親はキッと鋭くオスカルをにらみつけ、早く降りるように促した。 「しかし…」 しかし、ポリニャック家の問題が家の中で片付かず、この大騒動になっているのは明らかだ。 「娘の問題は私の問題です。余計なくちばしをはさまないで」 オスカルが反論するひまを与えず、夫人は彼女の肩をつかんで、さっさと足場の下へと押しやった。 「さあ、シャルロット、つまらない意地を張らずにこっちへいらっしゃい。お母様を心配させるためにそんな危険なところにいる事は、ちゃんとわかっているのですよ」 シャルロットはいやいやと頭を振り、反抗的な態度を取っている。 そして何を言ってもただ無言で首を振るだけ。 「お母様にはあなたのことが何でもお見通しです!」 夫人はあまりに子供じみた事をする娘に業を煮やした。 「何もわかってないわよ、お母様は!」 と、その時、シャルロットの頭の中で何かがはじけた。いつまでも子供扱いされたことに腹が立ったのかも知れない。 彼女は怒りにまかせて、しがみついていた手すりを離し、一気に飛び降りた。 自分なりの意地を見せたかったのかも知れない。 結局、母に似て、娘は強情だった。 「シャルロット!!」 ポリニャック夫人の絶叫が響き渡り、下で見守る人々がどよめいた。 実は鐘楼から落ちてもすぐ下には礼拝堂の屋上部分があり、いきなり地面まで落下することはない。 シャルロットはドレスのレースを引き裂きながら礼拝堂の屋根をゆっくり滑り落ち、下で待ち受けているオスカルの腕の中にすっぽりと収まった。 さすがにこの時ばかりはオスカルも青ざめて気を失ったシャルロットの苦しそうな顔を見て気の毒に思った。 愛する者と引き裂かれるつらさが今なら手に取るようにわかる気がする。 「かわいそうに、これほどまでに思い詰めているとはな」 顔を上げたオスカルの視線の先には、腰を抜かしそうになり、駆け付けた夫に支えられたポリニャック夫人が髪を振り乱して号泣していた。 しかしこういう話は突然、進展する。 シャルロットが大騒動を引き起こしている間に、何も知らないギーシュ伯爵は事もあろうか、こちらも決死の覚悟でアントワネットに恐れ多くも声をかけようと、王妃が現れるのを待ち、嘆願する機会を伺っていた。 ようやく侍女を引き連れて現れたアントワネットは、階段の下で祈るような目で見つめる男性の視線を感じた。 指を組み、いかにも訴えかけるような彼の態度に王妃はちょっとばかり興味を持った。 「私に何か御用がおありですの」 アントワネットの優しい問いかけにギーシュ伯爵は今にも飛びかかるような勢いで事情を話しはじめた。そして王妃が返答する前に、何とかシャルロットとの結婚の許可を欲しいと顔を真っ赤にして懇願していた。 ********** ポリニャック夫人は翌日突然、王妃からシャルロットの縁談の話を持ちかけられた。 「よろしいじゃありませんか」 アントワネットはおかしそうに笑って若い二人の恋を我が事のように楽しんでいる。 「はぁ…ですが、王妃様。ギーシュ伯爵は娘に釣り合うほどの財力も実力も無いとのことで、私も娘を嫁がせるのはたいそう不安でございます」 さすがのポリニャック夫人も口ごもった。昨夜の大騒動も身にこたえている。 シャルロットの意外な抵抗もそうだが、宮廷の栄華を欲しいままにしている夫人が、多くの人の前で失態をさらし、笑い物になった事も尾を引いている。 「好きな人同士が一緒になるのはさぞかし幸せな事ではありませんか。うらやましい限りですわ」 アントワネットはまるで自分の手のひらに若い恋人たちの運命が乗っているかのように目を細めている。 「ええ…」 ポリニャック夫人はまともに返答できない。 だが王妃に騒動が知れたことで、何か良い方向に話が進みそうな予感もしている。 「ではこういたしましょう、ポリニャック夫人。今度…」 王妃の言葉は小さくなり、扇子を口元に当ててささやいた。 数日後、大きな花束を持ったギーシュ伯爵がポリニャック家を訪れ、夫妻の見守る中、シャルロットに正式に結婚を申し込んだ。 少ししらけた様子のポリニャック夫人だったが、この時はもはや反対する気配は見せない。 不承不承ながら、二人を祝福した。 シャルロットはあまりの幸せに涙を流して喜んだ。 もちろん、ギーシュ伯爵も初恋の女性との結婚が許可されてこの上なく幸せそうにしていた。 ********** 「全てめでたしめでたしってとこだな」 アンドレは事の顛末を知って、あきれ顔のまま肩をすくめた。 「何だか、まんまとポリニャック夫人に利用されたみたいだな」 オスカルも苦々しく言った。 結局、ギーシュ伯爵とシャルロットの結婚が許可された裏で、莫大な持参金を彼女に持たせ、伯爵の年俸も倍増させることで決着が付いたのだと言う。 二人の真剣な恋心にアントワネットが感激したことが功を奏したらしい。 当然、持参金は国庫からまかなわれた。 決してポリニャック夫人のはかりごとではないにしろ、オスカルにしてみれば、自分の浮ついた気持ちから他人の家の娘に同情して騒動に巻き込まれ、このような結果になった気もする。 これで又、ネッケルの苦労が一つ増えたと思うとオスカルも頭が痛い。 「だけど戦争の費用に比べたら、持参金などかわいいものだぞ」 アンドレは案外とケロリとしている。 確かに話に聞くように、戦争のための経費は気が遠くなるほどの額面だ。 それに比べたら、あれほど非難されている王室の浪費など、ほんの一握りにすぎない。 対外政策ということもあるが、王室の浪費はひたすら非難され、国庫をおびやかすほど巨額の投資が必要な戦争への参戦は歓迎されているというのも、よくよく考えればおかしな話でもある。 元々、済んだことにとやかく言わない彼なのだが、いずれにしてもシャルロットが誰と結婚しても莫大な持参金が国庫から支払われたに違いないと言うのだ。 「そんな事より最近、国王陛下が買われた城は持参金よりも高くついたし、アルトア伯の借金の肩代わりもすごかったと聞く。王室にとってはシャルロットの持参金なんて何とも思ってやしないさ」 「もういい、アンドレ。いずれにしても貴族は浪費が過ぎる。私は貴族の価値を見失いそうだ」 オスカルは腹立たしさを通り越えてあきれている。 「まあ、あの幸せそうなシャルロットの顔を見ろよ。お前もちっとは気が晴れるんじゃないのか」 アンドレの言うように、明るい希望で頬が紅潮した少女の姿はとてもはつらつとして、周囲を幸せな気分に巻き込んでいる。 普通なら、貴族の娘はたとえ好きな男性が出来ても、時には想いを断ち切って別の男性の元へと嫁いでいく。 今はすっかり落ち着いた年代になり、娘の縁談に頭を痛める貴婦人たちも、かつては同じような道を歩んできたのだろう。 将来を誓った相手と引き裂かれ、泣いて泣いてあげくに別の男の所へと嫁いでいく。 そしてそこで新しい幸せを自力で見つけていくのである。 心のどこかに、きゅんとした胸の痛みをしまい込みながら。 “私がフェルゼンに寄せる気持ちも又、彼女らが経験してきたことと同じなのかも知れぬ” とっくの昔に少女の面影を無くした貴婦人方の、ひと癖もふた癖もある面々を見つめながら、ふとオスカルは小さくため息をつくのであった。 2005/8/6/ −後書き− 本文は勝手な創作です〜 大部分はウソてすからね〜 シャルロットの年頃とか、色々とこのままを 信用しないでね〜 up/2005/8/7/ 戻る |