−レインボー オブシディアン− 無口で堅実そうなアンドレは見かけによらず、ロマンティストだった。 早くオスカルとらぶらぶ(はぁと)な関係になりたい!と思っているのだが、それもままならない。 人目を気にせずキスしたり、手をつないでお揃いのジャケットでお出かけしたりしてみたいと、甘い甘いコトを常に考え、いいトシこいて、つい胸がうずくような想像を夜な夜な思いめぐらせているのだが、以前、彼女の意に反して押し倒したことがネックとなり、未だ二人は恋人の関係に発展していない。 んなモン、女はなんだかんだと言いながら押し倒されることを期待してるに決まってるぜ〜、とアランにもプッシュされたことはあるが、それはあくまで他人事だからこそ言える無責任な意見に過ぎない。 もしそれが又、裏目に出たらどうしてくれるんだとアンドレは余計に独りで悶々と悩むのであった。 おりしもパリでは恋愛占いが流行っていた。 特に天然石を使ったパワーストーン占いというものが主流で、町の若い娘などは恋愛成就のためにこぞって好みの石を買い求め、ネックレスやブレスレットにして身につけたり、意中の男性にプレゼントしたりしていた。 「これだっ!」 おぼれる者は藁をもつかむ・・・と、昔の人はよくぞ言ったものだ。 ・・・ちょっとばかし例えが違っているような気もするが・・・。 アンドレは休暇の日にパレロワイヤルにある天然石アクセサリーショップに行き、若い娘たちがキャアキャアと笑いさざめくにぎやかな店内で真剣になって恋愛成就の石を探した。 「あら、おじさんが買い物に来てるぅ〜」 「・・・マジになってキショイ〜」 娘たちはアクセサリーショップに全く似合わないアンドレを見てあからさまに言った。 しかし彼が恋愛を成功させるというピンク色のローズクォーツのネックレスを首に巻き付けたときは、さすがに店内の女性たちも無言で引いた。 「はへっ?!」 やっと自分が異質な存在であることに気が付いたアンドレは、結局自分で身につけることをあきらめ、オスカルの身に付けさせようと華やかなローズクォーツのブレスレットと、情熱を呼ぶというドピンクのインカローズのネックレスを買い求めた。 石には手に持った人の気持ちが移るということを店員から聞いたアンドレは、買ったアクセサリーを握りしめ、好き好きパワーを送り込んだ。 そしてその足でロザリーの元を訪れ、この品物をさりげなくオスカルに渡してくれるように頼み込んだ。 アンドレの買ったアクセサリーは翌々日にはオスカルの手元に届いたが、ロザリーから「もらい物ですけれど」と言われて受け取ったので彼女はさほど愛着がわかず、机の上に放置していた。 第一、見た目も女らしい石なので特にオスカルとしては身につけにくいという事もある。 毎日、司令官室の掃除にやってくるアンドレは、放置されたアクセサリーを見てため息をつき、肩を落として出ていった。 ところで事情を何も知らないオスカルの左手首には、実はレインボーオブシディアンという石のブレスレットが鮮やかに光を放っていた。 流行物には冷静な彼女だが、一応それでも女である。 ちょっとした小物で自分の気に入ったものなら、こっそりロザリーに頼んで手に入れて、目立たないところに付けているのだ。 軍服の袖は手首まで深くかぶっているし、その下に着ているブラウスの袖口のレースが手の甲まで覆い隠している。普段は腕に何をつけていても見えることはない。 オブシディアン。 別名を黒曜石というのだが、石の効用は「眠っている才能を開花させ、目標へ向かわせる」というものだ。 今で言うなら受験生などが縁起担ぎに持っていてもおかしくない。 その中でもレインボーオブシディアンは一見地味ながらも、光を受けると虹色に輝く神秘的な石である。 彼女は向上心の強い女性なのでこの石の持つ力はぴったりなのだが、どちらかというと好んで身につけている理由は、黒髪のアンドレを黒曜石にたとえている、という部分が大きい。 「あの時ならまだしも、今なら喜んで押し倒されてやるぞ」 彼女はクスリと笑って、ブレスレットを眺めつつ独り言をつぶやくのであった。 おわり 2005/2/25/ ※我ながら「しょうもな〜〜」と思いながら書いたので、暇なときに読んで下さい。 ・・・と後記で書いても遅いですが。 ちなみに天然石って見ているだけで楽しいですね。 そんな気分だからこんなお話になりました。 私もレインボーオブシディアンを買おうかな。(^^) up/2005/2/25/ 戻る |