−お知らせ−

このお話は史実に基づくものではなく、単なる妄想です。
一部に実在した人物・団体・物体・出来事・地名・思想・制度なども登場していますが、その行動や性格設定・実態・本質及び情景etcは、全て「でっちあげ」です。
又、内容も原作から大きく外れている場合も大いにあり、予測なしにオリジナルキャラクターも登場します。
まれに、現在は控えるべき表現も出てきますが、あくまで場面を描写するためにやむなく使用しています。
気になる誤字脱字誤用も当然、存在します。
それを承知の上、多少のことは目をつぶり、遊び心で読んでみようという方のみ、下へお進み下さい。





-雨の誓い・削除編-


これは校正の途中で削除したもので、本編とは無縁です。
こう言うのを書く時はたいてい深夜なので、ものすごく思いこんで書いてしまいます。
そして翌朝にチェックして「せっ…背中がかゆ〜い」という状態になるのです。

ただ、この内容はさほど背中がかゆくなったわけではないのですが、進行上、この時点で二人の関係を深める必要がないと考えたので消したものです。
これだけ読めばそれなりにラブラブ単発ものって感じがするかも。




「私は…、私はこんな事になるためにお前を男として育てたのではないっ」
ジャルジェ将軍は混乱していた。

我が娘と召使いに過ぎぬアンドレが互いにどのような気持ちでいるのか、知りたくもなかった。


「この親不孝者めが、一人で一人前になったような顔をしおって…」
将軍の脳裏には不意に、幼い頃からのオスカルの愛くるしい表情の一つ一つがよみがえってきた。

わけもわからぬ激しい感情が彼を襲い、その目はみるみる潤んできた。



「大馬鹿者!」
そう言い捨てると将軍は部屋を出て行った。




**********




大げさな足音が遠ざかると、ドアの外にいた召使いたちも一安心して散っていった。

オスカルは肩を落として書斎のドアを静かに閉じた。
そしてアンドレに向き直ると、抑えていた感情が一気に高まってきた。


「ああ…アンドレ…アンドレ」
彼女は戸惑うことなく、彼の胸の中に飛び込んでいった。


もし、アンドレの身に何かあったとしたらきっと耐えられない、そう思ったのだ。

ブレゼ候と対立しても、近衛兵と対峙してもこれほどまでに取り乱すことはなかった。

むしろ突きつけられた困難は彼女をさらに勇敢にした。



「すまない、私のためにおまえまで巻き込んでしまった」
オスカルは肩を震わせて泣いた。涙が止まらなかった。


「俺のことはどうなってもいい。俺の命など…もうどうでもいいんだ」
アンドレは彼女の身体を強く抱きしめた。

我を忘れて飛び出した彼に対し、結局、身を挺して守ってくれたのは他ならぬオスカルだった。
かけがいのない女性を我が腕に抱きしめ、彼も又、思わず感極まった。


「おまえの命は私のものだ、アンドレ。どうでもいいなんてことはない、わかっているな」
オスカルはしばらくしてから顔を上げ、勝ち気な顔で言った。


アンドレは彼女の頬に手をやり、親指でそっと涙を拭いてやった。

気の利いたハンカチなど持っていない。陶器のように繊細な彼女の頬が傷つかないようにと彼の指は少し震えていた。

そして少しはずかしそうに顔をそらすオスカルをこちらに向かせ、彼女の問いに返事を返すこともせず、ただ強引に唇を重ねた。


昼にはあれほど緊迫した状況の中で雄弁に語り、今も又、父に対して激しく応酬していたとは思えぬほど、彼女の唇はひんやりとして柔らかい。

アンドレは持てる情熱の限りその頬に、うなじに、そして再び唇にと、荒々しい口づけを繰り返した。


しかしオスカルはもう逆らわなかった。

アンドレの腕の中でおとなしくし、肩の力を抜いて身体を任せている。

時折、息が出来ないのか苦しそうで腕の中でもがくのだが、彼は決してオスカルの身体を離そうとはしない。
正気を失ったように、彼女の細い腰をそして背中をわしづかみにし、折れるほどに抱きしめていた。


そしてばあやが書斎のドアをノックするまで、二人は現実の世界から遠く離れた所に行っていたのである。



「お嬢様、お怪我はございませんか」
ばあやはおそるおそる部屋の中をのぞき込んだ。

彼女の目には、部屋の真ん中で目を赤くし、不自然にたたずむ二人の姿が写っていた。




**********




アンドレはばあやにつまみ出され、お嬢様にちょっかいを出したんじゃないだろうねと詰め寄られながら、何とかその場をしのいでいた。


自分の部屋に戻り、古いカバンの中から母の形見の黒い小冊子を取り出し、中身を読むとも読まないともなくパラパラとめくってみた。

詩やことわざが書いてあるその本の所々には亡き母の手による祈りの言葉や、勇気づけられる言葉が書いてあり、かつてつらいことが起きたアンドレを幾度となく救ってきたのである。

とにかく何でもいい、今は自分の心を静めたかった。


アンドレはあの時、祖母が書斎に入ってきて良かったとさえ感じていた。

もしあのまま誰の妨害も入らなかったら、自分はオスカルを有無を言わさず我がものにしてしまったかも知れなかった。

そうなれば、いつかの誓いは破られてしまう。


いつかはそうなることを望みつつ、彼は自分の感情を抑えてきた。
激情だけではない、心から人を愛するとは何かを考え続けていたのだ。

だが、彼の本能はオスカルを我が手に抱き、欲望のままに翻弄することを熱望していたのである。



アンドレの眠れぬ夜は長かった。


2006/10/13/



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